こんにちは。阿豆らいち(@AzuLitchi)です。
最近、仕事で原画を納品する機会があったので、オリジナルの落款を篆刻しました。消しゴムはんこよりハードルが高そうですが、やることは意外と簡単です。またとても簡単な篆刻の転写方法も考案したので紹介します。
意外と簡単!気軽な落款の彫り方(篆刻)
落款とは(篆刻とは)
落款(らっかん)とは、一般的には作品の隅のほうに自分の名前の判を押すこと。名前を筆で書いた下に判を押すこともあります。 落款を自分で彫ることを「篆刻(てんこく)」と言います。 篆刻は美術の授業で経験したことがある人も多いのではないでしょうか。
慣れてくるとデザインから完成まで二時間程度で済みます。
落款に使うフォントは篆書体
実印などには隷書体(れいしょたい)を使うこともありますが、篆刻に使う書体は「篆書体(てんしょたい)」を使うことがほとんどです。篆書体にはハネやはらいがありません。篆書の時代には文字は筆で書かれるものではなく、石や骨に刻まれていたのです。つまり篆書はその由来からして石に刻みやすい書体なのです。
篆書体については専用の辞書もあります。
が、こちらのようなデータベース検索サイトなどで篆書体をプレビューできます。
本来の篆書体には漢字しかありません。カタカナやひらがな、英数字を含んだ篆刻の場合、ひらがな部分は篆書体っぽい感じに自由にデザインして良いと思います。
アマチュアが自分用に気軽に篆刻するのであれば、漢字部分も篆書体そのものをぴったり使う必要はありません。自分好みにアレンジしてオリジナルの落款を作ればいいでしょう。
準備するもの
篆刻トライアルセット
最低限これだけあればなんとかなります。1000円以下。落款用の石材は画材店などでも手に入ります。気に入った色ツヤのものを選べます。
印泥(いんでい)
普通の朱肉でもいいのですが、印泥には繊維質の何かが練り込まれていて、凹凸のある画面にもキレイに押すことができます。
印矩(いんく)
これがあれば位置合わせが正確にできます。一回でキレイに押せなかった時に印泥付けて押し直したりできます。
印床(いんしょう)
これがあったほうが断然石材を押さえやすいです。手を怪我する可能性もグッと下がると思います。
準備
石材の彫る面を紙ヤスリで平らにしておきます。
落款の印影(いんえい)をデザイン
まずは紙に鉛筆でイメージ考えます。
石のサイズを正確に計って、Illustratorでデザインします。もちろん紙とペンでやってもいいのですが、こういう書体のデザインみたいなのは慣れていればIllustratorの方が格段に捗ります。
この段階では完成イメージを丁寧に作り込んでおいた方がよいです。この段階で手を抜いてしまうと彫りでリカバリーできません。
落款には文字を彫りのこす「朱文(しゅぶん)」と、文字の部分を彫る「白文(はくぶん)」があります。
Illustratorならどっちの印影が良いか簡単に見比べられますね。今回、私は白文に決めみました。
左右反転した画像も作って置くと彫るときに参考にできます。
デザインを石に転写(阿豆らいちが考案したインクジェットプリンタ方法)
多くのサイトや書籍で篆刻家の真鍋井蛙氏が考案した「マジック転写方法」が紹介されています。
篆刻文字・てん刻マジック転写方法 | 手彫り印鑑 実印の通販 京都のはんこや幸栄堂
トナーのコピー機で印稿をコピーして黄色いマジックインキで擦る方法…
なのですが、トナーのコピー機も黄色いマジックインキも持ってないので、猛烈に面倒です。面倒なので色んな方法を試行錯誤しました。
ここで私、阿豆らいちが考案したインクジェットプリンタ方法を紹介します。
篆刻インクジェットプリンタ転写方法
石材には予めポスカなどで転写の下地を作っておきます。私は赤いポスカを塗っておきました。
インクジェットプリンタで印稿をプリントアウトします。手書きの場合は複合機のコピーで良いです。この際、モノクロ印刷だと顔料インクが使用されることがあるので、白黒でもカラー印刷を選択して水性インクでプリントアウトしておくのがポイントです。
プリントアウトした印稿を石材に合わせて折り曲げたら
紙に水を一滴垂らして
石材と貼り合わせます。
この状態でコインなどで擦ると…
このようにインクジェットプリンタのインクを石材に転写することができます。
私が試行錯誤の末に編み出したこの方法、引用するときは是非
「デザイナーの阿豆らいちが考案した篆刻インクジェットプリンタ転写方法」
とご紹介ください。
篆刻
篆刻刀でガリガリと力強く彫ります。丁寧に作った印稿(いんこう)ですが、石にも目や節があって、印稿の通りには絶対彫れません。その場の勢いとノリで印影が決まっていくのです。
イラレの通りに作りたいなら3Dプリンタ使えば良いよねって話になっちゃいますので。
試し押し
できたかなーと思ったら試しに押印してみます。彫りの時間はだいたい1時間くらいで済みました。
彫りが甘いところがあれば補刀(ほとう)を加えます
撃辺
篆刻が済んだら、フチを印刀の柄などで叩いてわざと欠けさせます。この方がグッと雰囲気がよくなります。これを撃辺(げきへん)と言います。
押印
印泥を練って落款に付けたら、印矩で位置を合わせて押印します。一度でキレイに押せなかったら印泥つけなおしてリトライします。
(実際はこのあと少し補刀入れました)
これで自分だけのオリジナル落款が完成です。難しいようですが、デザインから完成まで2時間程度でできました。
是非オリジナル落款の作成に挑戦してみてはいかがでしょうか。
プロ篆刻家の篆刻
プロの篆刻家が彫った一個何十万という篆刻も存在します。プロ篆刻家には篆書に関する知識が不可欠で、篆書の書法に習熟していないと充実した印は刻れない…とされています。お金と気持ちに余裕がある方は、プロに依頼すると良いでしょう。
参考にした資料
篆刻の作り方や由来について、詳しくは「とめはねっ!」の三巻〜四巻に描いてあります。本記事でも参考にしました。
大事なことは大体漫画で学びました。
それではまた…さよならいち!・∀・)ノ