在宅フリーランスにとっては3.11震災のあの日の後、仕事や生活に対して数々の変更を強いられる期間がありました。当時の手記をもとに書きます。
2011.3.11震災の日のあと、なにがあったか
3.11は金曜日でした。
翌日は土曜日だった
翌日が土曜日だったので、当日や翌日からすぐ影響する仕事も少なかった。
夜まで子供達を保護してくれた保育園の園長先生にお礼の挨拶と報告をしに伺った。今回の件は災害対応なので延長保育料が発生しないとのことだった。世話になりっぱなしだ。
実は昨晩、タクシーの中にPHSを落としてしまっていたので、ヒミツバイクに乗ってタクシーの営業所まで受け取りに行った。帰りに地元のガソリンスタンドに寄ったら、ちょうどママ友がパートで店内受付をやっていた。
「タンクローリーが来なくなったので、今の在庫を売り切ったら店を閉めることになるかも」と教えてくれた。
まだガソリンスタンドは混雑していなかったので、ヒミツバイクの8リッターくらいしか入らないガソリンタンクを満タンにしておく。・・・まあ満タンにしに来たんだし。
日曜は卒対の予行練習でママ友が集会所に集まり、楽しく過ごした。
翌週から
急ぎのWeb更新
当時Web更新を請け負っていたクライアントから「イベント中止・延期のお知らせを緊急で掲載して欲しい」と相次いで依頼が来た。交通や施設設備の復旧が微妙な中、頑張ってイベント会場に到着してみたら中止だった…という人を少しでも減らしたいという思いで、できる限り対応に協力した。
私が仕事でできる社会貢献なんてこんなもんだ。
イベント中止・延期は自粛ムードもあったけど、それよりはイベント会場の電力不足や交通機関の間引き運転によるものという理由も多かった印象。
「チャリティーイベントを開催するのでイラストを無料で描いて欲しい」という依頼は思うところがあって断る。寄付なら寄付金控除の手続き含めて自分でやるからちゃんと報酬ください。依頼してくるチャリティー担当者の月給は減らないのだ。
原子力発電所の爆発
3/15の朝、福島の原子力発電所で大爆発があった。テレビでは何度もその映像を映し出す。津波の映像も繰り返す。ディストピア感がすごい。
割と近い地域で、趣味でガイガーカウンターの数値をずっと公開しているWebページがあったので、仕事しつつ釘付けに見ていた。爆発からほどなく数値がじわじわ上がり続け、昼頃には通常の3倍程度を観測してキモを冷やす。
昼過ぎは給食後の保育園の園児たちが園庭に出て遊ぶ時間だ。保育園に電話して、今日の午後の園庭遊びを中止するように求めてみようか…と思案する。
ちょうど午前中だけ東から風が吹いていたようで、昼過ぎには数値は通常程度に下がって来た。
保育園お迎えの時に聞いたが、聡明な園長先生の判断で、この日の園庭遊びは中止にしたそうだ。
輪番停電
電力需要が電力供給能力を上回ることによる大規模停電を避けるため、東電が地域ごとに電力供給を順次停止させた。これが輪番停電である。
停電!2晩連続で喰らっただけであっさり精神的に参った。停電がキツ過ぎる。
2晩めは18時からの予定で、時間を過ぎても停電にならなかったので「今日は停電しないで済むのかな」と思ったら19時にシャットアウトされた。
郵便局やスーパーは防犯システムや冷蔵庫の都合のため停電予定時刻の前後2時間くらいずつ閉鎖してて、停電時間以外の生活もままならない。
町医者も開いている時間はめちゃくちゃ混雑する。処方箋の必要な常備薬を入手するのも時間がかかる。
輪番停電が実質3時間といっても開始時間に停電強制シャットアウトさせるわけにはいかないので、停電開始予定時間になったら全てHDD内蔵機器の電源を落として準備し、停電開始を待つしかない。
停電中は電話や通信も繋がりにくく、何も出来ずに寒さと暗さの中でじっとしているだけ。防犯灯や信号も消え、街全体が真っ暗になる。
停電の無い日でも電力不足への意識でお店などに出かけても常に薄暗い。気持ちも薄暗くなる。
停電復旧後も水道はすごい濁り水で、生活の復旧処理とその時間も必要。結局トータル4~5時間くらいは停電で仕事も生活もストップするのだ。
次の停電はあるなら翌日13〜16時、その前後は外出しても無意味…などと、停電に合わせたスケジュールを組まなければならない。停電していない時間は過密スケジュール必至。
疎開して停電の無い地域に行きたいと思ったが、大きめな案件が進行中でしばしば都内に打ち合わせに行かなければならず、それはままならなかった。
*1 23区内が輪番停電未経験な件に憤りを感じていた。
電力不足意識の温度差
3/24、都内に打ち合わせに出かけた。ついでに寄った家電量販店の店内は、地元店舗より照明が全然明るかった。デパ地下もしかり。ショーウィンドウの足下照明が点灯していて驚いた。
今現在、輪番停電を食らってる地域もあるのに、あの停電で稼いだ電力は都内の買い物客を照らすために使われているのだ。
当然打ち合わせ先の事務所内も照明はフル稼働していた。
打ち合わせ中に
「計画停電の間は作業もできないし、PHSの電波も止まります」
と説明したら
23区住みの担当者に
「計画停電なんてどっかの地方だけでやってるんじゃないんですかー?」と返された。
停電してない地域に住んでる人は、別の世界の話のように思えたのだろう。
あの辛い輪番停電に意味なんかあったんだろうかと今でも思い出す。
卒園式
式の最中に停電は無かったが、謝恩会は照明の点かない集会所で行った。
卒対の主要メンバーが放射能を恐れて疎開していた。
震災翌々日の楽しかった予行練習が懐かしい。
店舗から消えた品物
3/11の震災以降、品薄になった商品を自分で取材した範囲でまとめておいた。
3/11:地震当日のコンビニ
帰宅難民になって徒歩で帰宅中18:50にローソンに寄ったが、お弁当やオニギリは納豆巻き1本残っているだけ。カロリーメイトは大量にあったので、最後の納豆巻きとカロリーメイトを購入。
3/12:近所のガソリンスタンド
ヒミツバイクのガソリンを入れに行ったけど、並ばずに購入。
翌日からガソリン売り切れで閉店続出、在庫のあるガソリンスタンドは長蛇の列になりガソリンスタンド渋滞が発生。
3/14:輪番停電(計画停電)開始
懐中電灯と単一・単二電池、カセットコンロのボンベ、ろうそくが売り切れ。
単三→単一電池アダプタも品切れ。
食料の買いだめが始まり、米、乾麺うどん、食パン、カップラーメン、ほとんどの缶詰、飲料水、小麦粉が売り切れ。
納豆工場が被災して、納豆が品切れ。
東北方面の流通が止まって、牛乳が品切れ。
「石油が無くなると紙が無くなる」という発想のせいか、ロールペーパーが売り切れ。
3/15:福島第一原発爆発
ネットショップではガイガーカウンターが売り切れ。怪しげな製品も含めて。
3/16:計画停電の混乱
郵便局・スーパーなどは停電予定時刻の前後2時間くらいずつ閉店。
コンビニなどでもカップ麺は入手困難。スナック菓子の入手は比較的余裕。
3/17:診療内科とスーパー
診療内科が計画停電の予定がある時間は閉まるので、営業時間は激コミ。花粉症の薬をもらうだけなら早い。
スーパーでは乾麺の蕎麦の在庫がやや復活。うどん無し。コロッケなどのお総菜やお菓子は通常どおりの在庫。
3/18:卒園式
謝恩会で出すお弁当の食材の調達が危なかったけど、ギリギリでなんとかなったとお弁当係から聞いた。
3/19:土曜日
午前中のスーパーはカップ麺の在庫がやや復活。「レンジで2分でご飯」の在庫潤沢。米は品薄。
アートマンでろうそく入荷。単三→単一電池アダプタも若干数入荷。
ただし高い。
ビックカメラでカセットコンロのボンベの在庫復活。
行きつけのラーメン屋は通常営業
ガソリンはまだ品薄で在庫のあるガソリンスタンドは長蛇の列。閉店しているガソリンスタンドに並んで待つ車は警官に移動を促される。
3/20
ホームセンターではカップ麺とか袋麺・乾麺うどんは在庫あったけど、電池は単3しかない。ロールペーパーと米は午前中で品切れ。
夕方にスーパーを3件調査。肉や魚は潤沢。牛乳はどこも品切れ。米と卵の在庫は1店で確認。
小麦粉の在庫は復活。
ネットショップではアウトドア用バッテリーが品切れ。
ヨドバシ.comでUPSの在庫が一機種だけあり。
3/21
ヨドバシ.comのUPSの在庫が消える。
3/23:東京都の金町浄水場で1キログラム当たり210ベクレルの放射性ヨウ素を検出
水のペットボトルがあっという間に売り切れ。(私の在住市は金町浄水場の水はブレンドされていないのだが…)
3/25
震災から2週間。国内タバコの工場生産がストップ
3/26
ガソリン在庫が復活。並ばずにガソリン買えるようになる。
3/29:山梨県のスーパーを取材
納豆・水・電池が品切れ。米、ロールペーパー、カップ麺、卵、牛乳在庫豊富。
翌日には水の在庫が復活。
道の駅などで、いわゆる「南アルプスの天然水」を汲める場所は長蛇の列。
4/1:自宅近所のスーパーを取材
午前中だけ納豆の在庫が若干復活。
流通は回復して、牛乳在庫復活。
食パン・米・卵在庫豊富。
計画停電で発酵食品関連の温度管理が出来なくなったそうで、納豆、ヨーグルトが品切れ。
4/3:スーパーを取材
震災から三週間。
ペットボトルはジュース含め、1.5リットル以上のがほぼ売り切れ。500mlのも一家族2点まで。
4/6:スーパーを取材
米、乾麺うどん、食パン、カップラーメン、缶詰、小麦粉、牛乳、卵の在庫豊富。
ただし、商品棚のあちこちに欠品が見受けられる。
ヨーグルト、納豆、タバコが品切れ。
水は大手メーカーのでなければ在庫あり。一人4リッターまで購入可。
4/10明日で震災一ヶ月、近所のホームセンターを取材
カップ麺は一家族5個まで。水の在庫若干少なめ。米、うどん、食パン豊富。
単一電池がついに大量入荷、ただし2個パックで388円。
都知事選挙は原発推進派が当選。
4/12:午前中に近所のスーパーを取材
食パン・米・卵・牛乳の在庫豊富。
納豆・ヨーグルトは一家族一個まで。
水は一家族2リッターまで。
単一電池在庫無し。
国産タバコは一家族5箱まで。
ヨドバシ.comのUPSの在庫無し。
品薄総括
供給が絶たれていない製品は、1〜2週間かけて買い占めが一巡すれば在庫が復活した。
災害時への備えで必要なのは、単一電池ではなくむしろ単三→単一電池アダプタ。
買い占め時は特に、安いものから在庫が無くなる。倍くらいの値段のものは割と簡単に手に入るようになる。
当時、ブロガーのコンビニ店長が
「物流が復活して地域全体の在庫は通常通りに戻っているはずなのに、店舗から品物が消えた。買い占めのせいだ」
と記述していた記憶がある(当時ブクマカーではなかったので、元記事に近い情報あったら教えて欲しい)。
大衆の買い占め衝動は凄まじく、とどまるところを知らない。
まとめ
当日にドラマチックな出来事が無かった人でも、あの日のあと対象の地区では確実に生活の変化を強いられたと思います。「あの日」に何があったのかではなく、「あの日のあと」に何があったのかは、各々が語り継ぐ重要性もあるのではないでしょうか。
我が家では当時の経験を元に、停電への各種の備えを行っています。
それではまた・・・さよならいち!・∀・)ノ
*1:23区内の一部でも輪番停電の対象となった地域もあった。停電対象外地域に近いほど停電への憤り、不公平感は大きいように見えた。